アオリイカの生態5(イカ墨)
イカは敵から襲われると墨を噴出し、その反動で逃げ出します。
噴出のパワーは意外につよく、アオリイカでも空中を数メートルもジャンプすることがあるといわれます。
あとに残された墨はあまり広がらないでイカの分身の役目を果たすほか、豊富に含まれるアミノ酸の匂いでも敵を引きつけます。
この墨は血液と同じく、自分で作った栄養成分なので、何度も吐いたイカは疲弊して死んでしまいます。
墨には粘性があり、もし吸い込むと吐いたイカ自身もエラが塞がれて危険です。
狭い場所で墨を吐かれると全滅するため、漁師さんは流れのある海中で吐かせてからイケスに取り込みます。
私たちが取りこむときも、海中で墨を吐かせて取り込みましょう。
乗合船で個人イケスがある場合でも、最後まで生簀に入れておくのではなく、タイミングを見て〆てクーラーに入れることをお勧めします。
墨の成分に毒性はありませんが、同種のイカは危険を感じて身を潜めてしまいます。
エギングで、あたりがあったのに乗らなかった場合などは水中でアオリイカが墨を吐いている可能性が高く、この場合は同じ場所ではしばらく釣れなくなりますから、場所を変えることをお薦めします。
逆に、チヌなどの稚魚は栄養分を求めて寄ってきます。
この集魚効果に着目したフィリピンの漁師は。イカ墨をビニール袋に入れて小さな穴をあけ、流れ出した匂いでマグロを集めて獲る漁法を開発したそうです。
イカの天敵であるクエやタチウオは海の底から襲いかかります。
夜間でも月明かりがあれば、黒い墨でもダミー効果を発揮できるでしょう。
しかしイカ本体が光っている場合、暗い海中で墨を吐いてもダミー効果を得ることはできません。
そのため、発光イカであるヒカリダンゴイカやギンオビイカは発光する液を吐いて敵の眼を欺くそうです。
ちょうど瀬戸内海でのアオリイカ釣りのシーズンは、タチウオ釣りのシーズンと重なっており、釣り場によってはアオリイカを狙うエギに太刀魚が飛びついてきたりします。
エギにかかることはまれで、ハリスを切られたり、たまには釣れているアオリイカに襲い掛かってくるケースもあります。
私は、サゴシ(サワラの幼魚)がかかったことがあります。